歌詞とMVについて
ーーーー己の欠落に向き合えるか 今作を世に出すまでに、かなりの時間と勇気が必要だった。 欠落、欠点。無いのに有るもの。なのに未知ではなく自身の最も近くにあるものだ。そして、成る可く目を背けたくなる部分だ。 この作品の歌詞にはこの要素が蔓延している。 歌詞についてはとにかく救いが無いようにしたかった。逃げ場所や余白がほとんどないものにしないと、それを歌う苦しさと釣り合わない。成り立たない。 元々とある企画によって生まれた作品だったのだが、紆余曲折あってその企画では扱わず自身の作品でVOCALOIDかつデュエット作品でリリースすることになった。 それに合わせて、根底にあるテーマは変えずに、 vflowerやテトといったキャラクターの界隈への影響やそのプロフィールといった文脈を加味して歌詞を書き換えることにした。 歌のパートを細かく振り分けしているのも、勿論自身にとっては非常に意味がある。この部分をvflowerが歌う事が、テトが歌う事が何というかグッとくるんだ…と思いながら分担と調声をした。 映像担当の巳早さんには、この作品が『欠落』というテーマから枝分かれした意味が複合的になっているかなり厄介なものだとお伝えした。音源が完成してから随分と寝かせていたため、自分の中ではMVの方向性や雰囲気は固まりつつあったが、どのような題材と共にそれを作っていくか悩んでいたところで、とんでもない映画作品と出会い、強烈にインスピレーションを掻き立てられた。 そして、その映画『サブスタンス』をリファレンスとして巳早さんに共有し、わざわざ観ていただき(ホラーや過激描写が苦手とか嫌いだったらどうするんだというのと、そもそもあまりに強烈で万人向け映画では無いからある種の賭けではあった)、物語から得た哀しさ・心の複雑さを元に新たなストーリーを組み立てていただき、MVコンテに落とし込んでいって貰った。 最初コンテを見た時、あまりにも最高で美しいが、とてつもなく哀しかった。なんだかこの作品を出すのには、その当時『楽しい』を積み重ねて作品を手掛け始めていた自分とのギャップが激しく、公開に至るまで勇気や覚悟を持続させる事が必要不可欠だと感じた。つまり、都合のいい陽気な感情だけで作品に携わるという事を、止めなくてはならない。幸せとは程遠い行為。このキャラクター達をこのエンドに導いていくのであれば、それ相応のエネルギーを本人らも消費する。 巳早さんには無理難題を吹っ掛けたみたいになったのに、見事最高の形で出力し、表現し、成し遂げてくれた。とてつもない。感謝しかない。 ちなみにキャラクターの名前について、謎の歌姫サンタ・テレサは初期案から絶対にこれだと決めていたが、アンの名前だけはあまりにも浮かばずにずっと悩んでいて、本当に公開日前日ぐらいに決定した。山奥にひっそりと住み、ちょっと浮世離れしていて、虫や本への興味、魔術的な知識を持つ少女。なかなか思いつかなかったが、結果的に凄くハマった名前だと思う。 彼女はこの世界線のムウと一体どんなやり取りをして、秘薬を作るに至ったのか。腹を満たしたのは一体どっちだったのか。MV内では詳しく語られていないが、2人の過去や関係性を元に想像し考え始めると、胸が締め付けられる。
サウンドについて
ロックサウンドである事は最初から決まっていて、悲劇感を出すためムーディさが入るというイメージのまま、デモ音源とフレーズを用意。その後、元々の企画の一環で偶然知り合ったbizさんにアレンジをお願いしてみたところ、自身の好みというか理想系にバチッとはまった。 主にギターベース、リズム部分を整えて貰い、シンセの音色やフレーズは自身のデモをしっかり活かしつつ、自分では思いつかない&弾かないコードの解釈が入り込んでいた事で新鮮な感覚が得られた。当時、熟練度が違う…とあまりにも落ち込んだくらいだ。今回、その作って貰った音源を再mixし自身のギターフレーズも新しく入れ込んだ事で、整っているのに荒い部分もある、より合成獣的な雰囲気の楽曲に仕上がった気がする。 初っ端のイントロのギターとリズムしかない部分が寂しくはあるが情熱的、フォークまたはフラメンコのようなイメージで気に入っている。そこから感情が高ぶっていくように音の激しさやリズムの手数が増えていく事で、進んでいく物語と、取り返しの付かなさみたいなものを表せたと思う。 ちなみに自画自賛みたいになるが歌詞にカメオという文字を入れていたから、そこの辺りでVOCALOIDとして知名度の高い(個人の感想)ミク・リン・レンをカメオ出演させるというアイデアはしめたと思った。自身のMVにボカロキャラクター的に登場するのはかなり珍しく、巳早さんのデザインを見た時はテンションが上がった。歌詞とはいえ、凄く嫌なこと言わせてごめん、とは思ったけど。
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