Φ歌詞について
━━━━大きな流れ、同じ事の輪廻への恐怖
皆見栄を張り、嘘をつく。
この事について理解出来ない、のではなく理解したくないといったスタンスで作品を作ったのは初だ。
いつもは肯定の箇所を探すのだが、今回は未知が自身の中で根幹のテーマであった為、このような書き方になってしまった。だからこそ、歌詞は自分が書いたのに幾つかは自分が書いた事が理解できない事が書き連ねられているので、時折読み返すと不思議な感覚がする。

人間の意志を操り、嘲笑うかのような存在―――それが人の理解を超えたものでなく、身近に侵食し取り入るものとしての機能や比喩としてマダが居るのではないかと自分は考察する。常日頃可視化されている訳でないが、だがひとたび人間が意志の火の輝きと熱を失い、何かに縋りたくなった時はすぐに顔を出してくる。誰もの近くにいる。
こうした特性といえば、『トラフィック・ジャム』のフラリーとウェルターを彷彿とさせる。
奴らは何処にでもいる悪意そのもので、誰もがそうなりうるものとして描かれているように感じるが、マダはそれよりもっと純に高次の存在として干渉してくる。
こんなに他人事のように書くのは、映像を制作して下さったBAKUIさんの方がこの作品を理解してるかもしれない、という気持ちが自分の中でずっとあるからだ。
自分がBAKUIさんにこの作品の概要について伝達する時、あまりにも曖昧な物言いでしか話せてない。ほとんど感覚で作り自分があまり理解出来ないものを伝えようとすると、ここまでぐにゃぐにゃになってしまうのか、と少し悔しくなったぐらいだ。
だからこそこの映像が出来たのは末恐ろしい。
BAKUIさんが感覚を出力する表現が唯一無二のベクトルで突出しているという事実を、それがあまりに凄すぎるという事をこの世に知らしめるのがもう自分の責任というか義務みたいに思えてくる。BAKUIさんは本当に凄い。

人によってネット環境がすべてであり、支配体制が出来上がったこの現代において邪悪とは、誰も彼もに好かれる様、対象に合わせて変幻自在に姿や態度を変えられる者達による搾取や心理的苦痛等の行いだと思う。
それらを一生理解したくない、という気持ちからこの楽曲の構想は発露したが、歌詞を書いていると段々と自分達だって、何処で生きていくにしても何をするにしても日常的に本当の姿や性格を偽って発信している事に気付く。
正気の自己と内にある怪物、どちらも紙一重なのである。
ひとつのボタンを掛け違えただけで簡単に人は入れ替わる。それをさせないのが理性や意志というものだと思う。
それを侵される恐怖を、解決させず皮肉の段階で完結させたのは自分としても珍しいと思った。

この作品では8という数字がキーワードになっている。嘘八百や八方美人など“騙し”に関連する言葉とも相性がよく、それに横にすれば∞で循環、流転…そして蜂。様々な象徴的な意味が連想される。
だがひとつ怖い話をすると、この曲をリリースする時期がこの自身の活動8周年記念と重なったのはまったくの偶然である。作り始めた時は一切考えていなかった。
最終的にあれよあれよと色んな都合でリリースがズレて、結局この時期に出すことに決定した時は、何か背筋に冷たいものが走るような感覚があった。自分達は生きていく上で既に目に見えない大きな流れや何かの掌の上で転がされているだけなのかもしれない。そんな事を改めて思う切っ掛けでもあった。
∞サウンドについて
非常に音を少なく、というのを目指していた。色んな理由があるが、一番は梵そよぎの声を目立たせたかったから。
Aメロ等はBillie Eilish作品的にコーラスを両端に分けるやり方などを参考にし少しぞわぞわする様な感じにしたかった。
最近自身のボーカルワークに対する意識はかなり変わってきた。歌をちゃんと聴きやすく目立たそう、という意図はかなりある。
次に、音が少ないのは怖いから。これは自分だけの感覚だが、隙間があるほど怖いと思う。その分色々な部分でmixが難しいけど。何かの例にならってやるより、自分らしくやってみることにした。
そしてやはり未知や理解出来ないものについて書くのであればサウンドが予定調和になりすぎないように、今回はリプTONEにギターを弾いてもらうことにした。彼はいつも自分が好きで弾けないけど弾きそうなフレーズというのを、ドンピシャで出してくれる。これは一朝一夕で付くものではなく互いの感覚というか波長が合うからであり、それはほぼ同じルーツを辿り今同じバンドをやる事になったという色々な選択や積み重ねの結果なのかなと思う。ありがたい。
ベースは可能な限りキショくしたいと思っていたので、新しく買ったInfiniteのTrad JB 4st を使って低音を減らしトーンやピックアップ調整でカリカリにし、土台となるベースの役割を無くした音で録音した。チルレコRemixの時みたく荒々しいベースアレンジも可能だったのに、今回でまた新たな可能性に気付けた。今後が楽しみなベースだ。
全体を通して、最初は盛り上がる場所もない淡々としたイメージで作曲していたのだが、アレンジの段階でどうしてもサビでぐわっと来るような感覚が欲しくなった為、不思議な事に全体的に山場が無いのに一応あるみたいな、とにかく説明が難しい変な曲になった。映像でその辺盛り上がりが分かりやすくなっているが、音楽だけで聴くと音数もシンプルに一本線でかなり最近の洋楽的なアプローチになっているのかなとは個人的には思う。ごちゃついた曲も好きだが、もっと単純で洗練された様な曲も今後は作っていきたい。
ちなみに2番でショパンの幻想即興曲の引用があるが、これはこの作品が世に出る切っ掛けとなったエピソードを知った時、この曲に入れるしかないなと思ったからだ。
動画